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2011-08-09

『チェック・アンド・リベンジ』

うむ、酷い出来のSSが出来上がったでござる(´・ω・)
あああああ自分には語彙力が全く足らんよおぉぉぉぉ。

一応文と椛とにとりの話になっています。でも気づいたらもみーが多めになってしまったよ。
どうでもいいですが自分は将棋より花札や麻雀が好きです。超絶初心者ですけど。


『チェック・アンド・リベンジ』

主な登場人物
霖之助、椛、にとり、文





 蝉の鳴き声がけたましく魔法の森に鳴り響いている。
 新緑の葉も時期と共に色を濃く変え、夏の到来は誰もが否応無しに実感させられた。

 魔法の森はその名の通り木が密集した地帯である。日照りによる温度の上昇はあまりない。
 しかし、それ故に日の光は木の葉によって遮られ、森の中は常に薄暗い。
 そしてそれは、森の入り口にある香霖堂でも例外ではない。

 薄暗く、あらゆる物が雑多に置かれた香霖堂の店内。
 中央のカウンターでは店主である森近霖之助が椅子に座り、机に置かれたプラスチック製の将棋盤を凝視していた。
 そして、その向かいには同じく将棋盤を凝視し、顔を歪めて唸る少女が一人。 

「あややや……ち、ちょっと待って下さい」

 目前に映るこの局面をどうにかできないかと、あれこれ考えているのはブン屋の射命丸文。
 ちなみにちょっと、とは言っているが、あれこれ四半時が経過している。

「ふむ、僕の見た限りでは詰んでるように見えるが」

 そう店主に言われるまでもなく、現在の局面は既に絶望的である。
 何処に逃げようが、少なくとも後数手で彼女の王将は逃げ場を失うだろう。
 やがて観念したのか、悔しそうに文は溜め息混じりで投了を告げた。

「うぐぐ……ま、参りました……」
「はい、ありがとうございました」

 軽く頭を下げ、霖之助は軽く身体を伸ばす。長く同じ体勢でいたのか、ぽきぽきと小気味の良い音が立った。

 霖之助と文が対局し始めたのはまだ日も昇り切ってない朝である。それだけ長く続けていればそうなるのも当然である。
 経緯は兎も角、彼女の将棋の腕に何度か敗れた後、ようやく霖之助はこの対局で白星を勝ち取ることができた。

「はぁ、店主さんって負けず嫌いですよね」

 彼は負けると何でも自分が勝つまで挑戦するのだ。ある程度文は今日の対局で霖之助の性格を理解していた。
 負けた後の彼の苦笑、その顔には少なからずの歯痒さが混じっていた――のだが、当の本人は全く気が付いていないようである。

「何を言ってるんだ、僕は何でも人並だよ」
「どの口がそう言うのかしら」
「何か言ったかい?」
「いーえ何も」

 思わず本音が漏れた。

「さて、店主さんの機嫌も取れたことですし、今日の本題と参りましょうか」
「待て、その言い方は語弊が――って、今日は新聞の配達に来たんじゃないのかい?」
「まぁそれもありますけど、それとはまた別件です。実は今日、妖怪の山で宴会が……げ」

 いきなり文の顔が苦い顔を作る。彼女にしては珍しく、少々焦っているようだ。

「どうかしたのかい?」
「あやや、すみません、ちょっと急用ができてしまったので今日はこの辺で失礼します。それと、今日山で宴会があるので良かったら来てくださいね。それじゃ」
「あ、おい文――」

 止める間もなく、彼女は勝手に店の裏口から出て行ってしまった。
 扉の閉められる音を呆然と聞き、霖之助はどうしてウチの常連はこんな奴等ばかりなんだと一人嘆く。

「……やれやれ」

 妖怪の山で宴会。彼女には悪いが天狗に囲まれて宴会なんて真っ平御免である。今回の件は断――

 ――カラン、カラン。

 そう思って間もなく、今度は正面の玄関から来客者が訪れた。
 今回はちゃんとした客でありますように。そう願い、霖之助は店主として来客者に声を掛けた。

「いらっしゃい」
「ご無沙汰してます、森近さん」
「やほー森近、何か新しい商品入荷した?」

 珍しく、霖之助の願いは天に届いたようだ。
 やってきたのは哨戒の任に就く白狼天狗、犬走椛と川に住むエンジニア、河城にとり。
 最近だが、来店した二人は間違いないお得意様だと霖之助は認識していた。

「成る程、文が逃げたのは彼女が原因か……」

 そして同時に、彼女が一目散に裏口から出て行った理由も凍解する。

「ん、文が来てたの?」
「ちょっと前にね」
「……全く、あの方は……」

 呆れとも不快とも読める表情を作る椛。
 ふんと鼻を鳴らす彼女を見れば、何となく彼女と文の関係は察することができるだろう。

「そこまで彼女が嫌いかい?」
「あの方は不真面目過ぎるのです。この前も匿って白黒を山に入れてしまうし……どうしました?」
「ああ、いや、何でもないよ」

 思わず込み上げてくる笑みを霖之助は何とか抑える。
 以前、彼女に椛との仲を訪ねた際、文が言ったことをふと思い出したのだ。

 ――あの子は生真面目過ぎるのですよ。

 どちらも大概だがね。そう霖之助は心の中で呟いた。

「っと、それより今日はどんなご用件で?」
「今日は買い物です。本将棋盤が欲しいのですがあるでしょうか?」
「ん、妖怪の山では本将棋より大将棋が主流だと聞くが……」

 霖之助の疑問には、店内を見渡していたにとりがそれはね、と答えた。

「少人数だけど最近本将棋もやるようになったんだよ。私や椛も最近やり始めてね、今は私が簡易的に作った盤を代用してるけど、折角なら本格的にってことさ」
「成る程ね。わかった、今探してくるから少し待っててくれ。それとにとり、君が興味を持ちそうな道具はあっちに纏めてある。好きなだけ見て行ってくれ」
「りょうかーい」

 意気揚々とにとりは霖之助の指した方向に向かって行った。その様子はまるで玩具箱に目前にした子供のよう。
 少しして、霖之助は数点の商品と共に倉庫から戻ってきた。

「待たせたね。ウチに置いてあるのはこれくらいかな」

 ごとごとと商品をカウンターに並べていく。
 見たこともない形の将棋盤もあり、椛は興味津々といった様子で一つ一つをじっくりと見ていく。

「これは半分しか盤がありませんけど……」
「ああ、それは折り畳み式だからね。外の世界の磁石製の駒に対応した将棋盤一式だ。軽いし折り畳み式で持ち運びも便利、何より磁石で駒が落ちない。手軽さと利便性のある一品だ」

 将棋盤を展開し、中に入っていた駒を置いて逆さまにして見せる。
 本来なら重力に従い落ちる筈の駒は、磁力によって将棋盤と離れずくっついていた。

「あ、ホントだ、逆さにしても落っこちないですね」
「他にもプラスチックという物でできた物もあるが……本格的を求めるなら是非ともこれを推そう」

 霖之助はカウンターにあった商品を少し端に寄せ、後ろに置いておいた物を椛の前に出した。

 椛の視界に映るのは、脚付きの盤だ。
 保存状態も良く、新品のような明るい色、ふわりと漂ってくる独特の香りは、将棋に疎い者でも高価な品だということがわかるだろう。

「これは……」
「僕が霧雨店で修行していた頃に作ったものさ」
「店主さんが?」

 驚いた面持ちで椛は霖之助を凝視する。
 店内に響いた声が意外に大きかったのか、別の商品を見ていたにとりがどうしたの? と戻ってきた。

「お? 随分と上質な将棋盤じゃないか。森近、これあんたが作ったの?」
「そうだよ」

 自分で作った物を褒められるというのは製作者としてこの上なく嬉しいものである。
 霖之助は得意気に胸を張り、上機嫌で置かれた将棋盤の説明を始めた。

「先ず盤材は基盤として最も高価と言われる本榧だ。成長の遅さ故の木目のきめ細かさ、数十年経てども決して消えることのない穏やかな芳香、使い込む程に滲む飴色の光沢は他の木材では決して味わうことのできないだろう。
次に盤の生命線とも言えるこの目盛り、これには日本古来の方法である太刀盛りを採用している。太刀の刃を潰し、残ったその精巧な直性を利用して盛った漆は日本ならではの美しさが宿る。そして何より――」

 ――ィン……

 それは将棋を愛好する椛でさえ聴いたことのない、明瞭に澄んだ音。
 霖之助がたった一指ししただけで、その音は波紋が広がったかのように香霖堂に響いた。

「駒を置き、その一瞬後に響く自然が織り成す音。これこそ木に親しみ、指し味を楽しむ将棋の醍醐味の一つといえるだろう」

 ゴクリ、と椛は無意識に唾を飲んでいた。
 目前に映るその将棋盤。それは不動ながらも、彼女の視線を捉えて離さない。

「この商品、将棋を愛好する君に自信を持って勧める一品だ。……如何かな?」
「か、買います! 是非とも買わせてください!」

 椛は思わず即決で購入を決意した。

 久々に商人らしいことをしたなぁ、と霖之助は大きな収入に内心小躍りしたい気分でひとりごちた。
 そんな彼の内心を知って知らずか、にとりは意地が悪い笑みを浮かべて自身の心情を吐露する。

「森近ぁ、何時もそうならこの店も繁盛すると思うんだけど」
「余計なお世話さ。売上は今のところ困ってないし、僕は自分の時間を大切にしたい」
「……なんで商売人なんてやってるんだろうねぇ森近は。職人の方がよっぽど――」
「え、ええと、店主さん。その将棋盤ってお幾らなのでしょうか?」

 それ以上は言っちゃいけないような感じがして、慌てて椛は会話に割って入った。
 実はにとりと同じことを思っていたのは秘密である。

「ん、ああ。そうだな……材木の種類や厚さを考慮してこのくらいかな」

 ぱちぱちと算盤を弾き、表示された金額を椛に掲示する。

「うっ」
「ふむ、その様子から察すると持ち合わせはあまりないようだね。それか持ち合わせがぎりぎりで買おうか迷っているというところか」
「うぅ、そんなに私って顔に出やすいですか?」
「まあね」
「即答された……」
「まあ兎に角。その将棋盤は良い物だ、自分で作っておいてなんだが良くできたと自負できる。だが意外と場所を取ってね。それに僕は既に別の将棋盤を使っているし、欲しい人がいるなら是非その人に使って貰いたい。そこで提案なんだが……」

 霖之助が指したのは件の将棋盤。
 椛も霖之助が言わんとしていることが理解できたのだろう、頭から生えた耳がぴくんと揺れた。

「今から僕と一局勝負する。それで君が買ったら半額の値段でこれを譲ろう。どうだい?」
「いいですけど、私が負けた場合はどうなるんですか?」

 少しだけ斜に構え、椛は負けた時の条件を訪ねる。
 別にそんな大したことを要求する訳じゃないよ、と霖之助は苦笑した。

「そうだね……次の来店時に川魚でも持って来てくれると嬉しいかな。調理してくれれば尚嬉しい」
「ふふ、わかりました。では受けましょう」

それから暫く、香霖堂には澄み切った指し音が響いていた。








「王手」
「くぅ……ま、参りました……」

 自分に残された術が投了しか無くなったこと再確認し、がっくりと椛は項垂れた。
 耳や尻尾もしょんぼりとしており何処か可愛らしい。

「ありがとうございました」
「うぅ、思わず勝ち急いじゃいました……」
「無暗に攻め込むのは得策とは言えないね、もう少し落ち着くといい」
「森近って意外と将棋強いよねぇ。 あ、それとこれ買うから会計お願い」

 互いに対局の感想を言い合っていると再びにとりが戻って来た。どうやら選定が済んだようである。

「毎度あり。……それにしても君は毎回これを買っていくね」

 にとりが手にしているのは外の世界で『携帯電話』と呼ばれている物である。
 霖之助も大分前から色々と弄ってはいるが、それらは今の今まで全く動いた例がなかった。 

「サンプルがたくさん欲しくてねー。いつか自作のものを動かしたいんだけどこれが中々上手くいかなくて。ひたすらサンプルと比較して試作品のチェック。そんで駄目だったらやり直しさ」
「む、大変そうだね」
「まあそうだけど、それ以前に楽しいからさ。今度こそ完成品を作ってやるんだから!」

 意気込むにとりの表情は、混じり気のない純粋な好奇心が宿っていた。
 そんなにとりの姿に、霖之助は霧雨店で働いていた頃の自分の姿を重ね見た。
 故に、彼は彼女の気持ちが自身の気持ちのように理解できる。

「頑張るといい。僕もにも手伝えることがあったら言ってくれ」

 撫でようとしたが、帽子越しなので軽くぽんぽんとにとりの頭に手を置く。
 にとりはくすぐったそうに肩を竦めたが、そこに不快ととれるものは全く無い。

「ん、ありがと森近」
「僕に協力できることがあれば、だけどね。……さて、今日はいい将棋日和だったな。色んな相手と対局できたし満足だ」

 知らなかった情報に、椛はきょとんと目を瞬かせた。

「私の他にも対局してたんですか?」
「まあね。君が来る前に文とも――」
「……店主さん、もう一戦指してもらってもいいでしょうか?」

 文の名を出したのを失敗だったのかと思うも時既に遅し。
 既に挑戦する気満々の彼女をどうにかするのは至難の業だろう。ここは普通に勝負を受けるのが最善か。 

「別に構わないが……」
「では早速!」

 再び対局を始め、さっきよりさらに気合が入っている。
 力みすぎて空回りしないといいのだが、と何気なしに霖之助は椛を見て思った。

「君がそんなに文を嫌う理由はなんなんだ……」
「……いえ、別に嫌いという訳では」
「おや、そうなのかい?」

 てっきり『ええ、嫌いですよ』みたいな反応が返ってくると予想していたのだが、予想が外れたようだ。

 パチン、と飛車の前の歩を動かしつつ椛は続ける。

「確かにあの方は不真面目ですし、やることなすこと適当ですし、たまに山の侵入者を匿ったりしますし。挙げていったらキリがないです。――けど、」

 パチン、と霖之助は角道を開ける。

「あの方の実力は確かです。悔しいですけど、私なんかが束になっても到底敵わない」

 ――パチン。

「今の目標はあの方なんです。どんなに時間が掛かるかわかりませんが……」

 ――パチン。

「必ず追いついてみせますよ。いつかぎゃふんと言わせてやります」

 自信満々に言って見せる椛に、霖之助は優しい笑みを浮かべた。
 普段見せたことがない表情に、思わず椛は頬を染める。

「君もにとりと同じで大した勤勉家だね。そういう子は好きだよ、頑張ってくれ」
「す、好きって――」

 ――パチン。

「お、君がミスをするなんて珍しいね。遠慮なく攻めさせて貰うよ」
「へ? ……あ!」

 自分は何をしてしまったんだ。
 椛は自分の桂馬を霖之助の歩の真ん前に置いてしまっていた。
 これでは取って下さいと言っているようなものである。桂の高跳び歩の餌食とは正にこのことだ。

「ま、待ったです店主さん!」
「待ったなんてのは上達の妨げにしかならないよ。そして将棋で一番やっていけないマナー違反だ」
「うっ」

 完全に店主の言う通りである。
 しかし、それでも椛はやりきれない感情を拭い去ることができなかった。 

「……元より店主さんがあんなこと言うから……」
「あんなこと?」
「い、いいえ! 何でもないです!」
「まあいいが、ここからどう挽回するのか。考えるものまた上達の一歩だよ」
「あ、はいっ、頑張りますっ!」

 ――そうだ、切り替えないと。今度は絶対勝ってやるんだ。
 ――少しでもあの方へ……そして店主さんへ近づく為に。

 そう心に誓い、椛は次の手を考え始めた。霖之助はそんな彼女の様子を楽しそうに眺めている。

「……こうしてみると親子というか恋人というか教え子と教師というか。まあ、仲がいいことはいいことだよねぇ」

 にとりが漏らした呟きは、集中している二人に聴こえることなく霧散するように溶けて消えた。



 《了》

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プロフィール

赤

Author:赤
霖之助が好きです
でも霖之助と少女達の恋愛はもっと好きです
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