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2011-07-20

『四季で一杯』


なかなかSSが進まないのでまたまた昔に走り書きしたものを即興で加筆。

個人的に小町は恋愛やR18的な要素には向いてない気が。
何故でしょうかね? やっぱり姉御肌だから?( ・ω・)
しかし、サボり魔は悪友的立ち位置が一番、これがマイジャスティス。



『四季で一杯』

主な登場人物
霖之助、小町





 時は卯月の上旬。

 寒かった冬は花の開花と共に終わりを告げ、心地よく暖かい日が続いている。
 ここ数日の幻想郷の空模様は、雲一つない爽やかな晴天だ。

 そんな春の訪れを喜ぶかのように妖精達は騒がしく――いや、騒がし過ぎるくらいに燥いでいる。
 妖精の下では蒲公英や向日葵、秋桜、彼岸花、水仙等、季節に関わらず四季折々の花達が一斉に咲いており、見る者を圧倒せんとばかりだ。

 というのも、これは六十年に一度という周期で訪れる、ある異変が原因で発生している現象である。
 だが異変といっても、放っておいて何ら問題は無い。
 いずれ季節に関係ない花は死神によって減り、異変は自然と解決に向かって行くのだ。

 そんな六十年に一度の光景を眺めながら歩を進めているのは、香霖堂店主、森近霖之助。
 人間と妖怪のハーフであり、博麗大結界がまだ存在していない時代から存在し続けている者である。

 その寿命の長さから、この異変も初めてという訳ではない。
 当時の記憶は朧げではあるが、危険性はなかったという記憶は微かに残っていた。

「……どこもかしこも妖精だらけだな」

 霖之助は呟き、歩を止める。
 折角の六十年に一度の光景なのだが、普段は滅多に外へ出ない彼は、今日ですら家の中を出る気はなかった。
 そんな彼が何故外出しているのか、その答えは空を泳ぐように飛んでいる妖精にある。

 彼は一人で静かに酒を飲むのを好んでおり、騒がしい環境を苦手とする。常連の少女達の行う宴会はその最たる例だ。
 そんな彼の家の近くにも、妖精は騒ぎに騒ぐ。おまけにいくら追い払っても次から次へと飛んできてキリがない。
 仕方無しに霖之助は重い腰を持ち上げ、現在静かな場所を探している、という訳だ。

 都合の良い場所はないか、思い付く限りの場所を霖之助はこれでもか、と浮かべる。
 やがて、その思考はある場所へと行き着いた。

「無縁塚……」

 魔法の森を抜け、再思の道を進んだ先に位置し、人はおろか妖精も訪れることはない、文字通り無縁の者達が行きつく場。
 霖之助は無縁仏の供養という建前で、毎年秋に店の商品の仕入れを行うが、そこは毎年彼岸花が咲いている。
 きっと、秋でない今でも彼岸花は咲いているに違いない。

「……騒がしくない分にはいいか」

 そう言って霖之助は、無縁塚へと歩の向きを変更した。







 程無くして、霖之助は無縁塚へと辿り着いた。
 やはりというべきか、この場所も例に漏れず異変の光景を見せていた。

 辺りは彼岸花に覆われ、その中を紫の桜が花びらを散らす。
 真っ直ぐ力強く咲く彼岸花と、涙を流すように儚く散って逝く紫の桜。

 暫しその光景に見入っていた霖之助だったが、ふと視線を動かすと、紫の桜の根本に彼岸花とは違った色彩の赤色が彼の目に止まる。
 相変わらずだなと苦笑し、霖之助は赤色の髪の人物に声を掛けた。

「小町、またサボってるのかい?」
「ひぃっ!?」

 瞬間、赤髪の人物が恐ろしい程の速度で起き上がり、思わず感心してしまう程の綺麗なお辞儀をする。

「すいませんすいません! ちゃんと仕事しますからどうか裁きだけは――って、なんだ香霖堂の旦那じゃないか、驚かさないでくれよ……」

 そう言いながら、驚いた拍子に倒れた鎌を木の幹に立て直す赤毛の女性。
 彼女の名は小野塚小町。
 幻想郷の死者の魂を運ぶ、死神の船頭である。

「んーよく寝た……っと。それにしても久し振りだねぇ旦那。去年の秋以来かな?」

 去年の秋というのは、霖之助が店の商品の仕入れを行う時のことである。
 霖之助は小町に無縁塚で珍しい物を見掛けてないか尋ね、小町はその情報提供を行う代わりに霖之助に条件を付ける。
 その条件はまちまちで、酒や食べ物だったり、話し相手になってくれだとか。
 そういう、年に一度の奇妙な交流が二人にはあった。

「ああ、久し振り。君も相変わらずだね。そうやって年がら年中サボタージュしてるのかい?」
「サボりじゃない、休憩してたのさ。こんな気持ちのいい日差しだっていうのに、昼寝でもしないと御天道様に失礼ってもんだろう?」
「余裕を持つことは良いことだけどね、君はもう少し真面目さを持った方がいい」
「はは、旦那に言われちゃ御仕舞いだねぇ」

 けたけたと笑う小町を見て、失礼だな、と霖之助。
 だが、その口元には自然と笑みが浮かんでいた。

「……で、今日は何しに来たんだい? わざわざあたいに説教しに来たって訳でもないだろう?」
「まあね、今日は静かな場所を探して来たんだ。ついでに花見で一杯飲もうかな、と」

 ぴくり、と小町が飲もうという言葉に反応する。

「いやー参った参った、酒の話をされちゃあ今日は仕事なんてできないね、うん」
「……まあ声を掛けたのは僕だし別に構わないけど、何かあっても僕は知らないよ」

 大丈夫大丈夫、と言って小町はどかりと腰を下ろす。
 霖之助もそれに習い、小町と向かい合う形で座った。
 後ろ腰から下げた瓢箪の徳利を外し、ポーチから猪口を取り出す――ところで霖之助は猪口が一つしかないことに気が付いた。

「ああ、大丈夫だよ旦那。あたいのはここに……ほら」

 そう言ったと思うと、いつの間にやら小町の手には猪口が乗せられていた。
 霖之助は軽く驚くが、小町は再度けたけたと大袈裟に笑う。

「大したことじゃない、あたいの能力だよ。家にある猪口の距離をちょいと弄っただけさ」
「ほう、便利だね。自分の能力を卑下する訳ではないが羨ましい限りだ」

 徳利を傾け、猪口に中の液体を注ぐ。
 互いの猪口には白く濁った酒が注がれ、頭上の桜をぼんやりと映し出した。

「お、濁酒じゃないか。清酒も良いけどあたいはこっちも好きだなぁ」
「というか君は酒なら無類で好きそうだ」
「美味ければ何でもいいってのは旦那も一緒だろ?」
「違いない」

 どちらかともなく笑い、それじゃあ、と小町が猪口を突き出す。

「乾杯」

 小町は猪口に口を付け、くっと一口で飲み干す。
 霖之助は口を付けず、彼女の呑んでいる様子を眺めていた。

「んー、美味いねぇ。……どうしたんだい旦那? 人、というか死神の顔なんか見て。あたいの顔に何か付いてる?」
「ああいや、酒は味はどうかな、と思ってね」
「? 美味しいけど……何かあるのかい?」
「大したことじゃないんだが……実はその酒は僕が作った物でね、率直な感想が聞きたかったんだ。美味しいと言って貰えて良かったよ」
「旦那が?」

 小町が目を大きく見開いて驚く。
 霖之助の作った濁酒は珠玉の一品とまでは行かないが、酒好きな小町でも素直に美味いと言わせられる物であった。

 口当たりは申し分ないし、香りもすっきりとした爽やかな香気。
 ほんのりとした甘い風味も手伝い、何杯でも飲めそうな気さえしてくる。

「随分と器用じゃないか旦那。酒屋に転職してみない? お得意様になってやるよ?」
「断る。僕は死ぬまで古道具屋店主でいるつもりだ。お得意様になってくれるのは大歓迎だけど」
「そいつぁ難しいねぇ。旦那の店にある商品の殆どは此処から持って行ったものなんだろう? 無縁塚にいるあたいなら金を払わなくても旦那より先に見付ければいい」
「そいつは残念だ」

 まるで旧知の友であるかのように、気兼ねすることなく言葉を綴る二人。
 波長が合う、とでも言ったらいいのか。お互いに話し難いと感じることは一切ない、なんとも不思議な縁である。

「それにしてもいい酒をご馳走になったもんだ。何か礼でもしたいねぇ」
「いや、構わないよ。美味いと言ってくれただけでも十二分に僕はお礼として値する」
「旦那ぁ、遠慮してちゃ商人としてどうなんだい?」
「む……」

 咄嗟に返す言葉が見付からず、霖之助は口を閉ざした。
 その間を肯定と判断した小町はそうだねぇ、と顎に手を添え、礼の内容を思考する。
 五分という時間が経過したところで、彼女はぽんと自分の手を叩いた。

「よし、じゃあ旦那が三途の川を渡るときにはニ割引であたいが舟に乗っけてやるよ」
「いやいやいや、死後のサービスをされても」
「三割引」
「程度の問題じゃない」
「二割増」
「増えてるよ」
「まあ冗談は置いといて」

 冗談だったらしい。
 呆れた表情を浮かべる霖之助だが、小町は無視して再び思考する。

「ん~……。そうだ! 良いことを思い付いたよ!」
「良いこと?」
「ああ、良いことさ。そういう訳で旦那、ちょいと目を瞑っててくれ」

 そういう訳で、の意図が分からず霖之助は疑問に思ったが、考えても仕方無い、と素直に小町の言う事に従った。
 やがて小町からあーでもない、こーでもないという声が聞こえてくる。
 目を閉じているからか、霖之助にとってその間は少しだけ長く感じられた。

「…………。んー、こんなもんかねぇ? じゃあ旦那、目を開けてみな」
「一体何を――」

 ――したんだい。
 そう続けようとした霖之助の口は言葉を紡ぐ機能を失い、半開きのまま止まってしまった。

 視界に映るのは見渡す限りの花、花、花。
 しかも花といっても彼岸花だけではない。
 蒲公英、桜、山吹、春紫苑、藤、鈴蘭、鳳仙花、向日葵、百合、桔梗、水仙、柊、椿、牡丹、沈丁花。
 数えていたら日など瞬く間に傾いてしまうだろう、そう思わせる程の量の花が霖之助の目前にあった。

 何処からともなく吹く風が、地平線まで続く花の海に波を作る。
 その様子は、誰もが息を飲むほど美しく、堪らず霖之助は感嘆の息を吐いた。

「どうだい旦那、ちょっとは酒代の足しにはなったかい?」
「…………」
「おーい、旦那ー」
「ここは……」
「ん?」
「ここは何処だ?」
「旦那、その歳でボケは辛いよ」
「僕は君の思ってるより爺さんだよ。というかどうやってこの光景を作り出したか説明して欲しい」

 簡単なことさ、と言って小町は周りを見渡しながら説明した。

「あたいの能力で幻想郷で咲いてるだけの花を無縁塚に持って来たのさ。そうしたら無縁塚に収まり切らないんで、無縁塚自体をこれまたあたいの能力で広くした」
「成る程、通りで無縁塚にいる筈なのに地平線が見える訳だ」
「驚いた?」
「ああ、驚いた」

 まだ頭が冷静になれていないのか、霖之助は未だに口が半開きのままでいる。
 その様子を見て、小町が心底可笑しそうに、腹を抱えて笑った。







 ようやく頭が平常を取り戻し、霖之助は猪口の中を一口で飲み干す。

「ふぅ、今日は外に出て良かったよ。まさかこんな絶景が拝めるとはね」
「そう言って貰えると嬉しいねぇ。少しは配置やらも考えた甲斐もあるってもんだ」
「成る程、僕が目を閉じている間に唸ってたのはその為か。君も中々――」

 と、何故か再び霖之助の口が機能を停止する。
 小町にどうしたと聞かれると、彼は珍しく慌てているようで、早口に捲し立てた。

「あー……小町、悪いが少々急用を思い出してね、申し分ないが今日はここらで暇させて貰うよ。機会が合ったらまた一緒に飲もう」
「あ、ああ。またね、旦那」
「ああ、また秋に会おう。それと……サボりは程々にした方がいい」

 そう言って霖之助はあっという間に小町の視界から消えてしまった。
 本当に珍しい。常にマイペースな彼があんなに急いでいる姿は紅白や白黒でも見たことが無いだろう。

「……そんな大事な急用だったのかねぇ?」
「それより、貴方にも大事な急用が出来ていたでしょう、小町?」
「そうなんだよねぇ。そろそろ花の異変を何とかしないとまた四季様に…………四季様?」







 無縁塚から十分に距離を離し、霖之助は若干乱れた息を整えた。

「ふう……閻魔様の説教は死んだ後で充分さ」

 見れば遠く、無縁塚の空には幾多の弾や光線が青い空を走っていた。
 ついでに『きゃん!』という可愛らしい悲鳴も響いてくる。

 心の中で現在、閻魔様に灸を据えられているであろう死神に謝罪しつつ、霖之助は何時ものゆっくりとしたペースで帰路に着いて行った。
 四季は四季でも、地獄の四季は真っ平御免である。



 《了》

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Author:赤
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