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2012-01-14

『退屈な冬の越し方』


敢えて言おう、チル姉って難しい!
けど執筆は今までの中で一番楽しかったです。質がどうであれ。

スペルカードルールができる前に、こんなことがあったらいいのになぁ。そんな妄想。
しかし私のチル姉にはカリスマを持たせることができなかったよ。ごめんね。


『退屈な冬の越し方』

主な登場人物
チルノ、半妖の少年






「なあ、半妖」
「なんだい、氷精」

 草木に霜が降りる寒気の季節、今日もアイツはここにいた。

 汚れている服とは不釣り合いな程白く短い銀髪に、目はどこか浮世離れした金色の双眸。
 容姿はまだ十にも満たないような少年だが、その虚空を見つめる無情の瞳は見る者に人ならざる者の印象を与える。

 その小さな足にはボロボロな稲わらの雪駄が申し訳程度に履かれ、足先は痛々しい程に赤くなっていた。
 というのに、アイツは痛いとも寒いとも言わない。ただただ空をぼおっと見上げているばかりである。

 それはまるで痛覚が存在してないかのような、または自分が自然の一部であるかのようにもあたいには思えた。
 実際に自然の一部である自分にそう思わせるのだから大したものである。尤もあたいは褒める気も讃える気もさらさらないけど。

「あのさ、いい加減人里に帰りなって」
「やだ」
「邪険にはされても迫害や村八分にはされてないんだろ?」
「…………」

 だんまり。最近パターン化しつつあるこのやり取りに溜め息を吐く。
 まあ、最近になってようやく会話できるようになっただけ進歩してると考えよう。

「あーもう、とにかく暗くならない内に帰りなよ。ここだって妖怪は通るんだから」

 効果があるとは思えないけど一応忠告はしておく。やっぱりと言うべきか、半妖はこっちの顔すら見ちゃいなかった。
 諦めて半妖から離れる。少し行ったところで振り返ってみても、半妖は相変わらず空を見上げたままだった。

「……暇ね」

 あたいは振り向くのを止めて、半妖と同じように空を見上げた。
 見上げる空は薄暗い雲が支配する空模様。日が届かない地上は昨日より冷え込み、閑散としたこの湖を余計に寂しくさせる。

「……早く、春にならないかな」

 あたいは冬が嫌いだ。

 生き物の声が全く聞こえない、無音で無機質な世界。
 皆が家や土、卵の中で季節を越すのに、あたいはそれをしないでいる。

 そんな自分だけが切り離されたような感覚に、昔のあたいは酷く怯えていた。
 自然の中の小さな歪みである氷精(あたい)はもう、同じ妖精から嫌われるのに慣れっこだ。

「……うん、やっぱ暇だしな。仕方無い仕方無い」

 再び振り向き、アイツの方へ引き返す。

 だからかもしれない。あたいが半妖(アイツ)に構い続けているのは。
 人間と妖怪のハーフという存在は、今の幻想郷でも厳しいことくらい、すぐにわかる。

 仲間外れの仲間同士。
 傷の舐め合いをするつもりはないけれど、あたいはアイツに対する関心をちょっぴり持ち合わせているのだ。

「なあ半妖、暇ならあたいとお喋りしよーぜ」
「……なんで?」
「暇だから。おらおらさっさと吐いちまいなー」
「それお喋り違う、尋問」

 だから、これはちょっとした暇潰し。
 冬を越すまでの、あたいの気まぐれと老婆心である。いやぁ、あたいも老けたものだ。







「よーし半妖、今から雪合戦するぞ」
「……なんで?」
「暇だから」
「……やだ」
「んじゃ行くぞー」
「人の話を聞――わぷっ」
「はっはっは、注意力が鈍いぞ半妖め!」
「………………」
「ごめん、やり過ぎ、痛っ、待って、謝るから顔面ピンポイント射撃はへぶぅ!」






「……半妖」
「なに?」
「これはなんだ」
「料理」
「……雑草を茹でただけにしか見えないけど」
「雑草じゃない」
「ふむ、じゃあこれはなんだ」
「食べられる植物」
「じゃあこれ」
「頑張れば食べられる植物」
「はいストップ」






「あれ? 半妖、お前雪駄買い換えたのか」
「直した」
「ほーマジでか。器用だなお前」
「買うお金がなかっただけ」
「いやしかしよく出来てるな。新品と見間違えたぞ」
「……このくらい、普通」
「照れるな照れるな」
「……照れてない」







「……えっと、これは?」
「マフラー」
「いやそれはわかる」
「あげる」
「マジでか」
「寒そうだから」
「いやあたいは氷精……」
「?」
「……うんにゃ、有り難く貰っとく」
「物は大切に」
「わかってるって。サンキュ」







 季節は廻る。

 それはただの自然の摂理で、誰の干渉をも受けはしない。
 雪は溶け、桜の蕾は開花へと成長を続ける。動物は長い眠りから覚め、地を駆ける。
 紛れもない春の訪れだった。

 あたいの嫌いな冬が終わる。
 けれど、あたいの中には凍って溶けることのない、妙な違和感が留まり続けていた。

 冬が終わる季節だというのに、あたいの力は衰える兆しを見せないのだ。
 自然の影響を受けるはずの、自然の一部が、その影響を受けなくなっている。

 おそらく、これは――







「そっか、人里に戻るのか」
「うん。夢ができた」
「おお、半妖の目が輝いてる気がする」

 春風が微かに背中を撫でる、季節の変わり目。
 まだまだ寒さが抜けない冷えた空気の中、あたいと半妖は湖のほとりで向かい合っていた。

「ちなみにその夢って?」
「秘密」
「秘密、ねぇ。ヒントは?」
「霧雨店に行く」
「ほほう」

 霧雨店っていうと……確か人里の道具屋だったっけか。
 具体的なことは分からないけど、概ね道具についての勉強だろう。道具とか好きだからなぁ、コイツ。

「暫くは会えない」
「長い道のりになるか」
「うん」
「ま、焦らずゆっくりやりな」
「そのつもり」

 しかし、コイツが自ら人間に歩み寄ろうとするとはね。
 出会った頃では想像もできない今の半妖の姿は、歩み寄ることを諦めたあたいにとって少々眩しい。

「……あたいも」
「?」
「あたいもさ、やることができたんだ」

 やること、というよりはやらなくてはならないこと、と言った方が正しいかもしれない。

 おそらく、今のあたいは妖精という領域を着実に踏み外しつつある。
 このままではそう遠くない未来、あたいは自然の力では戻れないダメージを負うだろう。
 つまるところ、妖精の『死』だ。

「そのやることって、夢?」
「んー……どうだろ。夢と言えなくもないけど、ちょっと違うかな」
「?」
「兎に角、今日でここを離れるつもりだよ」

 正直、また半妖と会えるかは分からない。
 仮に会えたとしても、向こうは六十年の周期による記憶の還元がある。あたいを覚えている間に会うのことは無い筈だ。

「多分、もう会うことはないだろうな。これでさよならだ」
「…………」
「それじゃ――って、あ」
「?」

 そういえば。

「……半妖。お前、名前はなんて言うんだ?」

 今日でお別れだと言うのに、まだ半妖の名前を聞いてなかった。さらに言えばあたいも名乗った記憶すらない。
 それが酷く滑稽に思えて、あたいは堪らず苦笑を浮かべた。

「そういう時は自分から名乗るもの」
「変なとこに拘るなぁ、お前」
「名前」
「あーうん、あたいはチルノって名前だ」
「ちるの……覚えた」
「で、お前の名前は?」
「ない」
「……は?」
「僕に名前はない」
「おい、」
「けど、次に会う時までには考えとく」
「――――」

 思わず、あたいは目を瞬かせた。

 いやいやいや、さっき言ったじゃないか。もう会うことはない、って。
 なのに、次に会う時までに。確かにアイツはそう言った。

「……?」

 半妖を見てみる。その金色の双眸には、何の疑惑すら浮かんでない。馬鹿正直なほど、真っ直ぐな眼。
 
 コイツはあたいの言うことをまるで無視しやがったのだ。
 何の根拠もないのに、また会えると、コイツは本気で信じている。

「……そっか、また会う時までね、うん……ふふ、はは、っははははは!」
「?」

 半妖が不思議そうに見ている。けど、構うもんか。
 湖中にあたいの笑い声が響き渡る。声が止むのは、数分程の時間を必要とした。







「ふいー、あー久々にこんな大笑いした」
「大丈夫? 頭」
「あぁ大丈夫、平常運転さ。そうだな、うん。じゃあ、会う時までに考えときなよ」
「……うん」
「それじゃ、」

 くるりと、あたいと半妖は互いに背を向けた。

 さよならは言わない。また会うと約束したから。
 だから、あたいは別の言葉を使うことにした。

「またな、名無しの半妖」
「またね、チルノ」

 半妖が走り出した気配を感じ、あたいは空へと飛び出した。







「さって、これからどうしようか」

 まだ時間は余っている。けど、のんびりするくらいの余裕はない。
 妖精への転生はともかく、問題はその際の記憶だ。ちゃんとあたいは持ち越すことができるだろうか。

 持ち越せるのなら、例えあたいは力を失っても、頭の弱い馬鹿になっても、どんな代償を払うとしても一向に構わない。

「……ま、忘れた時の保険として、今のあたいを知ってくれる妖精を一人でも拵えとくとしようかな?」

 丁度見えた緑髪の妖精に狙いを付け、あたいは一気に急降下を開始する。
 最後の最後の友達作りだ。せっかくだし、ラストは笑顔で行ってみますか。

「っし、行くぞーっ!」

 半妖から貰ったマフラーが、ふわりと揺れた。



 <了>

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